10
2026-08
微生物ごとに得意な発酵の違い④
酢酸菌 ― 発酵の仕上げを担う微生物
いつもキティーブログをご覧いただきありがとうございます。
先日のブログで触れたように、台湾へ出張する機会があり、さまざまな台湾料理をいただいてきました。
その中でも印象的だったのが、料理のアクセントとして使われる黒酢です。酸味だけではなく、深みのある旨味や香りがあり、日本のお酢とはまた違った魅力を感じました。
この「お酢」のおいしさを支えているのが、今回ご紹介する
「酢酸菌(さくさんきん)」
です。
前回ご紹介した麹菌や酵母と比べると少し地味な存在かもしれませんが、酢酸菌は発酵の最終工程を担う重要な微生物です。
酢酸菌とはどんな微生物か
酢酸菌は、アルコールを酢酸(お酢の主成分)に変える微生物です。
代表的な菌として
- Acetobacter(アセトバクター属)
- Gluconobacter(グルコノバクター属)
などがあります。
乳酸菌が乳酸を作り、酵母がアルコールを作るのに対し、酢酸菌はそのアルコールを利用して酢酸を作ります。
つまり、
酵母が作ったアルコールを、さらに別の食品へと変えていく微生物
と言えます。
酢酸菌は酸素が必要
これまでご紹介した乳酸菌や酵母と大きく違うのが、酢酸菌は
酸素を必要とする(好気性)
という点です。
例えば日本酒をそのまま密閉して保管してもお酢にはなりません。
空気と触れることで酢酸菌が働き始め、
アルコール
↓
酢酸
へと変化していきます。
そのため、酢づくりの現場では空気の取り込みが重要な管理項目となっています。
酢酸菌が生み出す価値
酢酸菌が作る酢酸には、
- 爽やかな酸味
- 保存性の向上
- 味の引き締め
といった効果があります。
例えば寿司飯や酢漬けなどは、味だけでなく保存性向上という目的もあります。
昔の人々は微生物の存在を知らなくても、経験的にお酢の力を活用していたのでしょう。
酢酸菌は、発酵の恵みをさらに次の価値へと変える存在とも言えます。
黒酢やバルサミコ酢も酢酸菌の仕事
私たちが普段口にするお酢にもさまざまな種類があります。
- 米酢
- 黒酢
- りんご酢
- ワインビネガー
- バルサミコ酢
原料や熟成方法は異なりますが、いずれも酢酸菌の働きが欠かせません。
同じ酢酸菌でも、原料や発酵条件によって香りや味わいが大きく変わるのは興味深いところです。
発酵のバトンは続いている
ここまでご紹介してきた微生物の役割を整理すると、
乳酸菌
- 発酵環境を整える
- 保存性を高める
酵母
- アルコールを作る
- 香りを作る
麹菌
- 酵素を作る
- 原料を分解する
酢酸菌
- アルコールを酢酸へ変える
- 酸味と保存性を与える
このように微生物たちは、それぞれの得意分野を生かしながら発酵というバトンをつないでいます。
まとめ
酢酸菌は、
「アルコールを酢へと変え、発酵を締めくくる仕上げ役」
とも言える微生物です。
乳酸菌、酵母、麹菌が作り上げた発酵の成果を、さらに新たな価値へと変換する重要な役割を担っています。
次回はいよいよ最後となる、
「納豆菌」
についてご紹介したいと思います。
どうぞお楽しみに。
最後に、当社の乳酸菌素材「クリスパタス菌KT-11」が採用された商品がいくつもペットショップの店頭に並んでおりました。日本でも店頭で見かけられるように、ご提案して参ります。
06
2026-08
微生物ごとに得意な発酵の違い③
麹菌 ― 日本の発酵文化を支える司令塔
いつもキティーブログをご覧いただきありがとうございます。
毎日暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
先日、知人たちと町田で開催されている大江戸ビール祭り2026に行く機会がありました。
https://oedo-beer-festival.jp/
冷たいビールを飲みながら夏らしいひとときを過ごしましたが、ビールもまた酵母の働きによって生まれる発酵食品の一つです。シーズン1は終わってしまいましたが、シーズン2が明日から始まるので、機会があれば足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、先日は台湾へ出張する機会もあり、現地でさまざまな台湾料理をいただきました。醤油や発酵大豆、米酒など、日本人にもなじみのある発酵食品や発酵調味料が多く使われており、改めてアジアにおける発酵文化の奥深さを感じました。
発酵に関わる微生物は世界中に存在しますが、日本の発酵文化を語るうえで欠かせない微生物があります。
それが今回ご紹介する
「麹菌(こうじきん)」
です。
麹菌とはどんな微生物か
麹菌はカビの一種で、
- Aspergillus oryzae(黄麹菌)
- Aspergillus sojae
などが代表的です。
「カビ」と聞くと少し驚かれるかもしれませんが、麹菌は古くから人の生活に利用されてきた有用微生物です。
2006年には、日本醸造学会によって
「国菌(こっきん)」
に認定されるほど、日本の食文化を支える重要な存在となっています。
麹菌の得意技は「酵素をつくること」
前回、酵素についてご紹介しましたが、その酵素を大量に生み出している代表格が麹菌です。
麹菌はさまざまな酵素を作り出します。
アミラーゼ
デンプンを糖に分解する酵素です。
米や麦のデンプンを糖に変えることで、後に酵母がアルコール発酵できる状態を作ります。
プロテアーゼ
タンパク質をアミノ酸に分解する酵素です。
味噌や醤油の旨味のもととなるアミノ酸を生み出します。
リパーゼ
脂質を分解する酵素です。
香りや風味の形成に関わっています。
麹菌は発酵の下準備をする
乳酸菌は環境を整え、
酵母は香りやアルコールを作り出します。
一方、麹菌は
「食材を微生物が利用しやすい状態へ変える」
という役割を担っています。
例えば、お米の主成分であるデンプンをそのまま酵母が利用することはできません。
そこで麹菌がデンプンを糖に分解し、酵母が利用できるようにします。
つまり麹菌は、
発酵のスタート地点を作る微生物とも言えるのです。
世界でも珍しい日本の発酵文化
実は麹菌を利用した発酵文化は世界的に見ても非常に珍しいものです。
味噌、醤油、日本酒、みりん、甘酒など、日本の発酵食品の多くに麹菌が関わっています。
和食の旨味文化を支えているのも麹菌の働きです。
もし麹菌が存在しなければ、
現在の日本食はまったく違うものになっていたかもしれません。
発酵は微生物のリレー
ここまでご紹介した微生物を整理すると、
乳酸菌
- 発酵環境を整える
- 腐敗菌を抑える
酵母
- アルコールを作る
- 香りを作る
麹菌
- 酵素を作る
- 原料を分解する
それぞれが得意分野を持ち、バトンを渡しながら発酵を進めています。
発酵は一種類の微生物だけで成り立つのではなく、
微生物たちのチームプレー
によって支えられているのです。
まとめ
麹菌は、
「酵素を生み出し、発酵のスタートを支える司令塔」
とも言える微生物です。
乳酸菌が環境を整え、酵母が香りやアルコールを生み出す一方で、麹菌はその土台となる原料の分解を担っています。
日本の発酵文化に欠かせない存在であり、まさに和食を支える縁の下の力持ちと言えるでしょう。
次回は、お酢づくりに欠かせない
「酢酸菌」
についてご紹介したいと思います。
どうぞお楽しみに。
04
2026-08
【文献解説】加熱乳酸菌で肌の弾力を守る?老化を防ぐ最新メカニズム
株式会社キティーです。
乳酸菌といえば、お腹の調子を整えるイメージをお持ちの方が多いかもしれません。ところが近年、加熱処理をした乳酸菌が「肌の弾力」にも関わっているという研究成果が報告されています。
この記事では、紫外線や加齢によって肌の土台が崩れていく仕組みと、加熱乳酸菌がその土台を支えると考えられているメカニズムを、できるだけやさしく解説していきます。読み終えるころには、体の内側から肌を整えるという新しい視点が見えてくるかもしれません。
1. 紫外線と加齢が招く、肌の「土台崩れ」
毎日の通勤や通学、休日のおでかけなど、私たちは思っている以上に、日々紫外線を浴びています。肌が紫外線や加齢の影響を受けると、体内で「酸化ストレス」という細胞のサビのような現象が発生します。このストレスは、肌の土台であるコラーゲンを切断してしまう「酵素のハサミ」であるMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)を活性化してしまいます。土台が切り崩されれば、肌の構造はゆるみ、バリア機能も低下します。シワや乾燥といった、いわゆる「肌老化」のサインは、こうした目に見えない場所から始まっています。
2. 加熱乳酸菌 IDCC 3302 の、二段構えのアプローチ
この「土台崩れ」に対して注目されているのが、加熱殺菌された乳酸菌 Lactobacillus acidophilus IDCC 3302 です。
加熱によって増殖する力を失った菌体(死菌体)であっても、肌の細胞に対して二つの働きかけをすることが報告されています。
- ひとつ目は、土台を守る働き。 コラーゲンを切断する"酵素のハサミ"(MMP-1、2、9)の働きを抑え、肌の構造が崩れるのを防ぐ方向にはたらきます。
- ふたつ目は、うるおいを保つ働き。 肌の水分を抱え込む"吸水スポンジ"のような役割を持つフィラグリンなどの保湿タンパク質を増やし、バリア機能を内側から支えます。
生きて動き回らなくても、成分そのものが鍵となって細胞のスイッチを押し、肌の防御力を引き出してくれます。
3. ヒト臨床試験で判明した肌弾力の改善と安全性
実際に大人を対象とした12週間のヒト臨床試験では、偽のサプリメント(プラセボ)を摂取したグループと比較して、専門機器で測定した肌の「総合弾力指数 R2」に有意な改善が見られました。これは、肌を押した後に元に戻るバネのような力が維持されたことを示しています。また、12週間の摂取において重篤な副作用はなく、高い安全性が確認されました。
まとめ 今回の研究から、加熱乳酸菌IDCC 3302は「コラーゲン保護」と「バリア強化」のダブル作用により、肌の弾力維持に貢献することが可能性が示されました。当社では、こうした乳酸菌の可能性を活かした研究開発に日々取り組んでいます。詳しい研究内容や製品活用にご興味のある方は、ぜひ当社のお問い合わせページよりお気軽にご連絡ください。
【参考文献】 『Kim, H. et al. (2026). Effects of Heat-Killed Lactobacillus acidophilus IDCC 3302 on Skin Aging Parameters: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial in Healthy Adults. Nutrients.』
乳酸菌の肌老化抑制メカニズム.png
※ここまでのお話について:乳酸菌の研究は日々進歩しており、あくまで現時点の「可能性」としてご紹介をいたしました。
記事中のインフォグラフィックは、同文献に基づき、AI(NotebookLM)で作成したものです。