24
2026-09
微生物ごとに得意な発酵の違い⑤
納豆菌 ― 力強くタンパク質を分解する発酵の職人
ここ最近は気候が落ち着かず、不安定な日が続いています。
なかなか食事のメニューも温冷と悩むことが多いですが、そんな時でも比較的食べやすいのが納豆です。
私自身、外食ではない日は1日1~2パック食べています(酒蔵に行く日以外...理由は後述(笑))
そんな身近な納豆ですが、その美味しさや独特の粘りを生み出しているのが、今回ご紹介する
「納豆菌」
です。
前回ご紹介した酢酸菌が発酵の仕上げ役だとすれば、納豆菌は力強く食品を変化させる職人のような存在です。
納豆菌とはどんな微生物か
納豆菌は、
Bacillus subtilis var. natto
という細菌の一種です。
名前の通り、納豆づくりに欠かせない微生物であり、高温でも生き残る非常にたくましい性質を持っています。
乳酸菌や酵母と比べても生命力が強く、増殖速度も速いことが特徴です。
そのため、発酵食品の世界では少し特殊な存在として知られています。
納豆菌の得意技はタンパク質の分解
納豆菌が最も得意としているのは、
タンパク質を分解すること
です。
大豆に含まれるタンパク質を分解し、
- アミノ酸
- ペプチド
- 旨味成分
へと変化させます。
これによって、大豆そのものとは異なる、納豆ならではの旨味が生まれます。
前回までにご紹介した麹菌もタンパク質を分解しますが、納豆菌はさらに力強く働き、短期間で大豆を大きく変化させることができます。
あの「ネバネバ」の正体
納豆と言えば、やはり独特の粘りを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
この粘りの主成分は、
ポリグルタミン酸
と呼ばれる物質です。
納豆菌が発酵の過程で作り出しており、水分を保持する能力が高く、納豆特有の糸引きの原因となっています。
納豆好きの方にとっては魅力ですが、苦手な方にとっては最大の特徴でもありますね。
納豆菌は健康面でも注目されている
納豆菌は発酵食品としてのおいしさだけでなく、健康との関わりでも注目されています。
納豆には、
- ビタミンK₂
- 各種アミノ酸
- 食物繊維
などが含まれています。
また、納豆菌の働きによって作られる成分についても、さまざまな研究が進められています。
昔から「納豆は体によい」と言われてきましたが、その背景には納豆菌による発酵の力があると言えるでしょう。
実は共存が苦手な微生物
納豆菌の面白いところは、その生命力の強さゆえに、他の発酵で使われる微生物と共存しにくい点です。
例えば日本酒や味噌の製造現場では、納豆を工場内へ持ち込まないケースもあると言われています。
それほどまでに納豆菌は強く、環境中でも生き残る能力に優れています。
そのため、私も酒蔵に行く日は食べることを控えるようにしています。
ここまでの微生物を振り返ると
今回までにご紹介した微生物を整理すると、
乳酸菌
- 乳酸を作る
- 発酵環境を整える
酵母
- アルコールを作る
- 香りを作る
麹菌
- 酵素を作る
- 原料を分解する
酢酸菌
- アルコールを酢酸へ変える
- 酸味と保存性を与える
納豆菌
- タンパク質を分解する
- 独特の旨味と粘りを生み出す
このように、同じ「発酵」に関わる微生物でも、それぞれ得意分野が大きく異なります。
まとめ
納豆菌は、
「タンパク質を分解し、独自の旨味と粘りを生み出す発酵の職人」
とも言える微生物です。
その力強い働きによって、私たちは納豆という世界でも珍しい発酵食品を楽しむことができます。
今回で「微生物ごとに得意な発酵の違い」シリーズは一区切りとなります。
乳酸菌、酵母、麹菌、酢酸菌、納豆菌と見てきましたが、改めて感じるのは発酵が一種類の微生物だけで成り立っているわけではなく、それぞれの微生物が得意分野を活かしながら支え合っているということです。
次回は、これらの微生物が連携して生み出す「複合発酵」の面白さについてご紹介できればと思います。
どうぞお楽しみに。
